ゲド戦記 作者 激怒の真相:原作改変と監督交代が招いた原作者の怒りとは?

あなたは「ジブリ映画のゲド戦記を見たけれど、なぜ原作者が怒ったという話を聞くのだろう?」と思ったことはありませんか?結論、原作者アーシュラ・K・ル=グウィンの怒りは宮崎駿から宮崎吾朗への監督交代と大幅な原作改変が原因でした。この記事を読むことで、人気ファンタジー小説の映画化に関わる裏側の事情と、原作と映画の相違点についてよく理解できるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでください。

1. 原作者アーシュラ・K・ル=グウィンが激怒した背景

宮崎駿監督への期待とその裏切り

アーシュラ・K・ル=グウィンは、長年自分の作品のアニメ化に消極的でした。彼女はアニメというとディズニーのようなものだと思い込んでいたからです。しかし、『風の谷のナウシカ』などの宮崎駿監督作品に触れたことで考えが変わりました。

2003年に『ゲド戦記』の翻訳者である清水真砂子がル=グウィンと会った際、ル=グウィンは「ジブリ作品は、私の作品の方向性と同じ」と評価し、「もし私の作品を映像化するとしたら、OKを出せるのはあの人(宮崎駿)だけ」と発言したのです。

この言葉がスタジオジブリに伝えられ、映画化計画が進み始めました。ル=グウィンは、この企画の中心に宮崎駿がいると信じていました。実際、彼女との交渉の際には宮崎駿本人が直接アメリカを訪れ、熱意を伝えています。

その時、宮崎駿は「自分はこの原作を枕元から片時も離したことはない。自分が困ったときや悩んだとき、何度ひもといて読み直したか分からない。それぐらい読み込んで、あるときには助けられ、あるときには救われた。だから、この本に関して、自分はすべてを知り尽くしている。この作品を映像化するとしたら、世界中で自分をおいて他にはいない」と熱く語りました。

しかし、その後の展開は原作者の期待を裏切るものとなりました。宮崎駿は「ハウルの動く城」の制作中であることや、すでに自作品に「ゲド戦記」の要素を取り入れてきたことを理由に監督を辞退してしまったのです。

宮崎吾朗監督起用の経緯と原作者の反応

宮崎駿が監督を辞退した後、プロデューサーの鈴木敏夫は宮崎駿の息子である宮崎吾朗を監督に起用することを決断します。当時の宮崎吾朗は映画監督の経験がなく、この抜擢は多くの驚きを呼びました。

宮崎駿自身もこの起用に「あいつに監督ができるわけがないだろう。絵だって描けるはずがないし、もっと言えば、何も分かっていないやつなんだ」と猛反対しました。

しかし、鈴木敏夫の説得と宮崎吾朗自身の熱意により、最終的に企画は進行することになりました。問題は、この監督交代がル=グウィンにきちんと説明されなかったことにあります。

実際、交渉時には宮崎駿監督が責任を持つと言っていたのに、実際には制作にまったくタッチしていないこと、さらに「引退するつもり」だから息子にこの作品を作らせたいと述べていたのに結局引退せずに次回作を制作していたことに、ル=グウィンは怒りと失望を露わにしました。

原作のテーマと映画の乖離

原作「ゲド戦記」シリーズは、若き魔法使いゲドの成長と、彼が自分の内なる闇と向き合い乗り越えていく姿を描いた物語です。言葉の力や真の名の重要性、バランスのとれた世界観など、深いテーマと独自の魔法体系を持つ作品として高く評価されていました。

原作小説は全6巻出版されていますが、映画はそこから少しずつピックアップして1つに混ぜ合わせたかのような作品になってしまいました。

映画版では主人公がゲドからアレンに変更され、ストーリーも大幅に改変されました。このことは原作の本質的なテーマや魅力を損なうことになりました。ル=グウィンはこの改変について、原作の精神に反していると強く批判しています。

原作者の公式声明とその内容

映画完成後、ル=グウィンは試写会に招かれ、映画を観ました。その際の反応は複雑なものでした。

宮崎吾朗監督に対面して感想を求められたル=グウィンは、「It is not my book. It is your film. It is a good film.(これは私の本ではない。あなたの映画であり、良い映画です)」と答えたそうです。

この言葉はある意味で外交的な回答でしたが、その後、彼女は自身の公式ホームページに本音とも言える厳しい評価を記しました。

「本の著者に『どうしてあの映画は……』と質問してもむだです。著者も『どうして?』と思っているのですから」というまえがきから始まる文章は、かなり辛辣なものです。

その後も公式ホームページに「原作の精神に反している」「支離滅裂」「本だけでなく読者にも無礼」と辛辣なコメントを残しています(現在は削除)。

ル=グウィンは完成したこの映画を観て、「原作を無視しており、私のみならず世界中の読者を馬鹿にしている」と大々的に批判していました。

ただし、映画のすべてを否定したわけではなく、菅原文太が演じたゲド(ハイタカ)の声や、主題歌「テルーの唄」については高く評価していました。

2. 映画『ゲド戦記』と原作の主な相違点

主人公の変更:ゲドからアレンへ

原作「ゲド戦記」シリーズで一貫した主人公はゲドという魔法使いです。彼の成長と冒険を軸に物語が展開していきます。しかし、映画版では主人公がエンラッドの王子アレンに変更されました。

映画では、アレンは衝動的に国王である父を殺してしまい、国を逃げ出したエンラッドの王子として描かれています。放浪の旅の中、動物の群れに襲われていたところを、大賢人ハイタカ(ゲド)に救われるという設定になっています。

この主人公の変更は原作のファンから大きな批判を受けました。ゲドは原作で中心的な存在であり、彼の成長物語こそが「ゲド戦記」の核心だったからです。映画ではゲドは「ハイタカ」という名で登場し、脇役的な位置づけになってしまいました。

物語構成の改変とその影響

映画『ゲド戦記』は、原作の第3巻「さいはての島へ」を主な原案としながらも、オリジナル要素を多く加えた独自のストーリーになっています。

『ゲド戦記』は、アーシュラ・K・ル=グウィンの小説『ゲド戦記』の主に第3巻の「さいはての島へ」を原作とし、また宮崎駿の絵物語『シュナの旅』も原案としたスタジオジブリ制作による日本のアニメーション映画作品です。宮崎吾朗監督・脚本の独自解釈によるストーリーとなっています。

映画のストーリーでは、西の果てに棲む竜が突如、人間たちの暮らす東の海に現れた。それと呼応するかのように、世界ではさまざまな異変が起こり始め、魔法使いも魔法を失いつつあった。世界の均衡を崩す者の正体をつきとめようと旅に出た大賢人ゲド(通称ハイタカ)は、旅の途上で国を捨てた王子アレンと出会います。

このような物語構成の改変により、原作の複雑な世界観や魔法体系が単純化され、深みが失われてしまいました。また、原作の核心的なテーマである「均衡」や「真の名の力」といった要素も、表面的に扱われるに留まっています。

キャラクター設定の変更と原作とのズレ

映画では原作のキャラクター設定にも多くの変更が加えられました。特に大きいのは主人公アレンとヒロインのテルーの設定です。

映画におけるアレンとテルーの関係には恋愛的要素が希薄で、これは宮崎吾朗監督自身の分身として二人のキャラクターが創られた可能性があります。「つまりアレンとテルーは宮崎吾朗自身を2つに割って生み出した同じキャラクターであり、同一人物だと言うこともできます。」

また、原作では重要な要素である「真の名」の概念も映画では十分に掘り下げられていません。

原作では( )内はその人物の真(まこと)の名。作中の世界(アースシー)では、人に真の名を教えることはその者の掌中に己の魂を委ねることと同じで、通常、真の名を隠します。

これらのキャラクター設定の変更は、原作の世界観とのズレを生み出し、原作ファンを失望させる結果となりました。

映画オリジナル要素の導入とその評価

映画には原作にはない多くのオリジナル要素が導入されています。例えば、クモという悪役や、テルーがドラゴンになるという展開は映画独自のものです。

映画では「なぜテルーが覚醒してドラゴンになったのか、説明も、きっかけも、前兆も、何もない」という指摘もあります。

また、映画のビジュアル面では宮崎駿の絵物語『シュナの旅』の影響が強く見られます。

『ゲド戦記』ではなく、絵物語『シュナの旅』がキャラクターイメージの元となっています。監督の宮崎吾朗は「『シュナの旅』の登場人物に少しずつアレンジを加えていって…『ゲド戦記』の世界に近づいた感じです」と語っています。

これらのオリジナル要素の導入は、映画としての独自性を打ち出す試みでしたが、原作の世界観との整合性を欠いてしまい、結果的に物語をわかりにくくしてしまった面もあります。

3. 映画制作の舞台裏と関係者の思惑

宮崎吾朗監督の抜擢とその背景

宮崎吾朗監督の抜擢は、当時スタジオジブリ内でも大きな驚きと議論を呼びました。映画監督の経験がない人物をなぜ重要作品の監督に起用するのか、多くの疑問の声があがったのです。

当初はジブリ全スタッフから「なぜ宮崎駿の息子というだけで監督なんだ」と異論を唱えられたと言います。宮崎吾朗は絵コンテやレイアウトを書きながら色々なスタッフと渡り合い、自分の能力を証明し、溶け込んでいったとされています。

この抜擢の背景には、鈴木敏夫プロデューサーが宮崎駿の後継者を育てたいという思いと、すでに進行していた『ゲド戦記』映画化計画を実現させたいという二つの思惑がありました。

鈴木敏夫プロデューサーの役割と判断

鈴木敏夫プロデューサーは『ゲド戦記』映画化において中心的な役割を果たしました。原作者との交渉や監督人事の決定など、重要な判断のほとんどは彼によるものでした。

宮崎駿監督が『ゲド戦記』の監督を断ったことで、企画は難航し、監督候補とされていたアニメーターも降板してしまいました。後がなくなった鈴木敏夫プロデューサーは宮崎駿監督の息子、宮崎吾朗さんを監督に推挙します。

この決断は、宮崎駿監督ですら当初は反対するものでした。しかし、鈴木は宮崎吾朗に可能性を見出し、粘り強く説得を続けたのです。

宮崎吾朗がイメージ画を描き、それを見た宮崎駿は唸り黙ってしまったという。そして吾朗に「お前、本当にやれるのか?」と3日にわたって何度も問いただしたが、それでも吾朗は監督をやると返答し続け、そして駿はようやく吾朗が監督するのを呑んだという。

鈴木敏夫の判断は、スタジオジブリの未来を見据えた大胆な賭けでもありました。新しい才能を発掘し、スタジオの継続性を確保するという長期的な視点があったのです。

原作者とのコミュニケーション不足

『ゲド戦記』映画化において最も大きな問題の一つは、原作者アーシュラ・K・ル=グウィンとの間にあったコミュニケーション不足でした。

原作者ル=グウィンが望んでいたのは宮崎駿監督による映画化だったので、宮崎吾朗監督への交代はすぐには了承されませんでした。そこで宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーがアメリカに渡り、ル=グウィン氏と面会します。長時間にわたる交渉は難航しましたが、最終的にル=グウィン氏は「あなたの息子、吾朗さんにすべてを預けます」と言い、宮崎駿監督は感激の涙を流したそうです。

しかし、この交渉の過程でル=グウィンに伝えられた情報と実際の制作状況には大きな隔たりがあったようです。彼女は宮崎駿が引退を予定していると聞かされていましたが、実際には次回作の制作を続けていました。また、宮崎駿が何らかの形で制作に関わると期待していたにもかかわらず、実際には全く関与していなかったのです。

これらのコミュニケーション不足は、映画完成後のル=グウィンの落胆と怒りの大きな原因となりました。

制作スケジュールと品質への影響

『ゲド戦記』の制作は、通常のジブリ作品とは異なる環境で進められました。監督の不慣れさに加え、タイトなスケジュールや新しい制作手法の導入など、様々な挑戦が伴うものでした。

宮崎吾朗は製作の素人だったということもあり、新たな方法論や発想が生まれることとなりました。スタッフも自由に仕事が出来るようになり、鈴木敏夫は「ジブリのスタッフが持つ感性と力がうまくき出された」と評しています。

しかし、経験不足や時間的制約は作品の質にも影響を及ぼしました。一部の観客やファンからは、ストーリーのわかりにくさや登場人物の感情表現の不足などが指摘されています。

映画のレビューでは「さっぱりハマらなかった。ストーリーもよくわからない」「全然おもしろないなあ〜」「なんか深い意味を持たせようとしつつ浅い内容しか入ってなくて、面白いことも全然なくて、ただただ退屈な話」といった厳しい評価も見られます。

これらの問題は、制作環境やスケジュールの制約がもたらした結果と言えるでしょう。

4. 映画『ゲド戦記』の評価とその後の影響

興行成績と批評家の評価

映画『ゲド戦記』は、公開時には様々な評価を受けました。興行的には一定の成功を収めています。

『ゲド戦記』は興行収入78.4億円の大ヒットを記録しました。

これはジブリ作品としては標準的な成績であり、商業的には失敗ではなかったと言えます。しかし、批評家からの評価は全体的に厳しいものでした。特に原作との乖離やストーリーの分かりにくさが指摘されました。

映画レビューサイトでは平均スコア3.1点(5点満点)となっており、他のジブリ作品と比べると低めの評価となっています。

一方で、映像美や音楽については高い評価を得ています。特に手嶌葵が歌った「テルーの唄」は大きな人気を博しました。

ファンからの反応と議論

『ゲド戦記』の公開は、ファンの間で大きな議論を巻き起こしました。特に原作ファンからは改変に対する批判が多く聞かれました。

「ゲド戦記、やっぱりひどかったですか?原作者がキレたという話も聞きますし・・・・」といった質問が多く見られました。

一方で、映画単体として見れば楽しめたという意見や、テルーの唄などの音楽面を評価する声も多くありました。

「テルーの唄は心地良い」という感想も複数見られます。

この作品をめぐる議論は、映像化における原作尊重とクリエイティブな解釈のバランスという、永遠のテーマに一石を投じるものとなりました。

原作ファンと新規視聴者の受け止め方

『ゲド戦記』の評価は、視聴者の立場によって大きく分かれました。原作を読んでいるファンと、映画から入った視聴者では、作品の受け止め方に差があったのです。

原作ファンの多くは、原作の世界観やテーマが十分に表現されていないことに失望しました。一方、原作を知らない視聴者の中には、独立した作品として楽しめたという声もありました。

原作の改変は映画に限らずよく見られますが、必要なのは原作の良さとは何か、何を伝えたい作品なのかを理解すること。そしてそこを変えないことだと思います。

この意見は、映像化における本質的な課題を指摘するものです。原作の魅力を残しつつ、新しいメディアに適した表現を模索することの難しさを示しています。

スタジオジブリへの影響と教訓

『ゲド戦記』の制作と公開は、スタジオジブリにとって重要な経験となりました。宮崎駿以外の監督による作品制作のあり方や、海外の名作の映像化における姿勢など、多くの教訓を得ることになったのです。

特に宮崎吾朗監督にとっては、厳しい批判を受けながらも一つの作品を完成させたという貴重な経験になりました。その後、彼は『コクリコ坂から』(2011年)や『アーヤと魔女』(2020年)の監督を務め、徐々に自分のスタイルを確立していきます。

また、スタジオジブリとしても、原作者とのコミュニケーションや原作の本質を見極める目の重要性を再認識する機会となりました。これらの教訓は、その後の作品制作にも活かされていると言えるでしょう。

まとめ

  • アーシュラ・K・ル=グウィンは本来、宮崎駿による映画化を望んでいたが、実際には息子の宮崎吾朗が監督を務めることになった
  • 監督交代や引退の有無についての説明不足など、原作者とのコミュニケーション不足が大きな問題だった
  • 映画は原作の第3巻を主に参考にしながらも、主人公の変更や物語構成の大幅な改変が行われた
  • 原作の深いテーマや魔法体系が十分に表現されず、原作者は「原作の精神に反している」と批判した
  • 菅原文太演じるゲド(ハイタカ)の声や「テルーの唄」は原作者からも高く評価された
  • 映画は興行的には成功したが、批評家やファンからの評価は全体的に厳しいものだった
  • 映画の評価は原作ファンと新規視聴者で大きく分かれる傾向があった
  • この経験はスタジオジブリや宮崎吾朗監督のその後の作品制作に多くの教訓をもたらした
  • 原作の改変において大切なのは、作品の本質的な魅力を理解し、それを損なわないことである
  • 映像化における原作尊重とクリエイティブな解釈のバランスは常に難しい課題である

「ゲド戦記」の映画化は様々な問題を抱えていましたが、その経験はスタジオジブリの成長にとって貴重なものとなりました。映像化における原作との向き合い方や、作品の本質を見極める目の重要性を再認識させる機会となったのです。皆さんも機会があれば、原作小説と映画の両方に触れて、それぞれの魅力を比較してみてはいかがでしょうか。

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